top of page

一冊の本を返しに行ったら、教育談義が始まった――足元にも教育の宝がある

9月4日
読了時間: 4分
一冊の本から始まった教育談義
一冊の本から始まった教育談義

先日読んだ『日本人は死んだ』を返却するため、地域の公民館を訪れた。


50年前の本なのに、現在の教育にも通じる問題提起があり、「よくこんな本がここに残っていましたね」と館長さんに話した。


すると、今年この保存図書を借りた人は、私が初めてだったという。


本を返して帰るだけのつもりだった。

ところが、ここから思いがけず一時間ほどの教育談義が始まった。


■ アメリカ育ちの公民館長さん


館長さんは、この地域の方としては少し珍しい経歴を持っている。

アメリカで育ち、英語も堪能だという。そして、縁あってこの地域で子育てをしておられる。


子どもの頃には、日の丸が掲げられた道場で剣道を習ったそうだ。


海外で育ったからこそ、かえって「日本」を強く意識したという話が印象に残った。


そこから話は、新渡戸稲造へも飛んだ。


私自身、かつて「太平洋のかけ橋」という教材を使って道徳の研究授業を行い、中四国大会で実践発表をしたことがある。


新渡戸が外国人に日本人の精神を説明しようとした『武士道』にも関心を持った授業だった。


この話は、それだけでも長くなるので、また別の機会に書いてみたい。


■ 寺子屋からユダヤ人の教育、そして現代の学校へ


話題はさらに江戸時代の寺子屋へ。


そこからユダヤ人社会における教育とコミュニティの関係、日本の地域共同体や部落差別との類似性など、話はあちらこちらへ飛んでいった。


しかし、不思議と根っこではつながっている。


「人はどこで育つのか」

「教育は学校だけが担うものなのか」


という問いである。


■ 子どもの特性と学校のシステム


当然、現在の学校教育にも話が及んだ。


学校という仕組みが求める子どもの姿と、実際の一人ひとりの子どもの特性との間に、乖離が大きくなっているのではないか。


そんな話の中で、私はヒューマンセンサーの「脳の特性」という考え方についても少し紹介した。


同じ年齢だからといって、同じように学び、同じように考え、同じように行動できるわけではない。


では、学校の方を子どもに合わせることはできないのだろうか。


■ オランダのイエナプラン、そして鳥取のIB


そこから、幸福度の高い国として知られるオランダの教育制度や、イエナプラン教育の話になった。


異年齢の子どもたちが共に生活し、対話しながら学んでいく。


日本でもイエナプランを取り入れた学校が生まれている。


一方、鳥取県でも国際バカロレア(IB)など、新しい教育の仕組みへの関心が高まっている。


もちろん、新しい教育制度から学ぶことは多い。


しかし私は、少し違うことも考えている。


■ 教育改革は「看板」だけなのだろうか


学校にいた頃、私は職員室のあり方についても考えた。


雑多な備品、積み上がる書類、情報の置き場所……。


そんな一見すると教育とは関係なさそうなものも、実は学校で働く人たちのコミュニケーションや仕事の仕方を大きく左右する。


私は「開かれた職員室」ということを考えたこともある。


教育改革というと、どうしても新しい制度、新しい教育方法、新しい看板に目が向く。


IBを導入しました。

新しいICTを入れました。

新しい教育プログラムを始めました。


もちろん、それらも必要だろう。


しかし、目に見えにくい日常の仕組みの中にも、改善すべきことはたくさんある。


県教委や地教委が新しい看板を掲げることだけが教育改革ではないはずだ。


■ 足元にも教育の宝があった


本を一冊返すだけのつもりだった。


それが気がつけば一時間。


アメリカの学校からオランダの教育、寺子屋、ユダヤ人の教育、イエナプラン、IB、ヒューマンセンサー、そして日本の学校へ。


随分あちこちに話が飛んだ。


しかし何より嬉しかったのは、地域の中にも、子どもたちの育ちについて考え、実際に関わっている人がいることを知ったことだった。


世界の教育を見ることも大切だ。

新しい制度を学ぶことも必要だ。


けれども、遠くばかりを見ていると、すぐ近くにいる人や、地域にすでにあるものを見落としてしまうことがある。


足元にも、宝はあるものだ。


一冊の古い本を返しに行ったことで、そんなことに気づかされた午前中だった。

コメント


Fnacky21

学び、歩き、つくりながら、

これからの生き方を考える。

© 2026 Fnacky21

テキストです。ここをクリックして「テキストを編集」を選択して編集してください。

Fnacky21は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって紹介料を獲得できる、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

bottom of page