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テレマークという滑り

テレマークスキーの魅力は、速さや派手さではない。むしろ、その逆にあるように思う。

踵が自由なまま雪の上に立つと、身体は自然と謙虚になる。板を強引に押さえつけることはできないし、ごまかしも効かない。少し姿勢が崩れれば、そのまま不安定さとして返ってくる。だからこそ、雪面の状態や斜面の微妙な変化に、いつもより敏感になる。

テレマークで滑っていると、雪と「対話」しているような感覚になることがある。どこで力を抜き、どこで受け止めるか。急がず、焦らず、今の自分の技量と相談しながら一つひとつのターンを刻んでいく。その過程が、そのまま滑りになる。

上手くいかない日も多い。思うように板が走らず、身体がついてこないこともある。それでも不思議と嫌にならない。むしろ、「今日はここまで分かった」という小さな手応えが、次に繋がっていく。

テレマークは競争のための滑りではない。誰かと比べるものでもない。自分の身体と雪と山、その三つが揃ったときに、初めて成立する滑りだと思っている。

静かなゲレンデで、一人黙々とターンを繰り返す。速さも、距離も、回数も関係ない。ただ一つひとつの動きを確かめるように滑る時間が、何より贅沢に感じられる。

テレマークスキーは、うまくなるための道具である前に、「自分の感覚を取り戻すための滑り」なのかもしれない。だから私は、今日もまたこの板を選ぶ。


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